茨城新聞 2024年05月29日掲載

「中東和平の道、白紙状態」 酒井氏 ガザ情勢の課題訴え 茨城・つくばで県南西政懇
講演した酒井啓子氏=つくば市吾妻
県南西政経懇話会の5月例会が28日、茨城県つくば市吾妻のホテル日航つくばで開かれ、千葉大特任教授の酒井啓子氏が「ガザ情勢の展開 対立の原因と背景、国際社会への影響」を題に講演した。イスラム組織ハマスの攻撃を発端にした、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの大規模攻撃により「2国家が共存する中東和平の道が白紙状態になった」と指摘。国際機関が紛争を止められず、戦闘終了後もガザの統治や難民救済などの課題が山積することに触れ、国際秩序への影響の大きさを訴えた。

各地の世論調査結果を示しつつ、1993年のオスロ合意による和平構想が「終わりを告げた」と指摘。パレスチナの自治は限定的で実質平等でないため、パレスチナ人から恒常的に不満が噴出し、ハマスの攻撃につながったと説明した。

今後のイスラエル側の方針は明確でないが、背景にある欧州でのユダヤ人迫害の歴史と建国の理念を踏まえ、「領土拡大を目指すのでは」と推察した。ガザの住民はイスラエル建国時の難民が多く「再び追い出されることに対する憤りは強く、逃げたら終わりと腹をくくっている人も多い」と話した。